会長の時間

皆さん　こんにちは
今週も「私が建築をとおして学んだこと～巡り会った人と建築～」をテーマにお話しさせていただきます。

大学２年の夏休みに建築家 黒川紀章先生の事務所で研究生（今でいうインターンシップの様な身分）になるための黒川紀章先生ご本人による面接を受けました。
黒川紀章先生は、眼光鋭く才気あふれ、それでいて愛敬のある魅力的な方でした。

１年次の成績表を持参した私に黒川先生がすかさず指摘されたことは、もっと英語を学べということでした。当時、受験英語をみっちりこなして大学の授業も楽々とこなしていた私は何でそう言われるのか理解できませんでしたが、今となってようやくご指摘の意味が判りましたがもう手遅れとなりました。

当時、黒川先生の事務所は株式会社黒川紀章建築都市設計事務所という社名で、港区の青山１丁目の交差点に建つ青山ビルディングにありました。職員数は総勢100名規模の大事務所で世界中のプロジェクトに取り組んでいました。

その頃同じ港区には、乃木坂にある磯崎アトリエ、青山通りの草月会館にある丹下健三・都市・建築設計事務所の３事務所が競い合い、互いに事務所の全盛期を迎えようとしていました。

私は大学２年次と３年次の大学が休みの間、研究生として勤務させていただきました。
仕事はもっぱら模型作りでした。最初に作ったのは、福岡県庁舎の現場に指示を出すための模型でした。完成間際に黒川先生が模型を見に来て、すかさず手摺の高さが低いといって高くする様に言われました。私はプロの建築家の判断力の早さに只あ然とするばかりでした。

その他、デザイン提案も含めたエスキス模型の制作や、黒川先生の代表作メタポリズム建築として有名な中銀カプセルタワーから着想を得たカプセルホテルのユニットの模型を制作しました。ベッドルームのユニットにどんな機能を組み込んだらいいのか楽しく議論した思い出があります。後年、カプセルホテルは黒川紀章の発案によるものだったと気付きました。

事務所には海外からの留学生も学びに来ており、一緒に模型作りに励みました。
仲良くなった友人の１人に、ニュージーランドから京都大の大学院に来ていたジョン君がいました。彼は私の服装を見て、何でお前は何着もセーターを着替えるのかと文句を言いました。セーターは１着でいいのだと言い張って聞きません。見ると彼は古びた同じセーターを毎日着続けていました。彼はニュージーランドでは、どんな家庭でも週末を海で過ごせる別荘を持っていて、ヨットに乗って過ごすのだ。ニュージーランド人の方が、日本人より金銭的に貧乏でも豊かに暮らしていると自慢していました。

夏のある日、黒川事務所へ行こうと朝食をとりながらTVでモーニングショーを見ていたら、黒川先生と女優の若尾文子さんの軽井沢でのランデブーがスキャンダラスに報じられました。私は、これは黒川事務所の最大の危機だ、黒川紀章が社会から抹殺されるかもしれないと思い、大急ぎで事務所へ行き先生の秘書の女性に先生は大丈夫ですかと尋ねました。そうすると秘書は笑いながら、あなたは何を心配しているのといった表情で黒川先生は朝から上機嫌で自分の部屋で踊っているわよと言いました。
それを聞いた私は、黒川先生と自分のメンタリティーの落差に力が抜ける思いでした。

黒川先生のテーマカラーは、黒に近い利休鼠色でした。着ているものも全て自分でデザインされ小柄でやせ型で黒装束の先生は謎の中国人のような風貌でした。
青山ビルディングの地下に駐車してあった先生愛用のアストンマーチンも模型運搬用のミニバンも同じ色でした。
そんな黒川先生が女優 若尾文子さんをくどき落としたセリフが「あなたはバロックだ」というフレーズであることは有名な話です。

後年、大分県総合運動公園のドームは黒川先生の設計によるものです。
1999年頃、大分WFクラブの旅行でアムステルダムを訪問し、ゴッホ美術館に行った際、黒川先生の設計で新館がオープンしたばかりでした。こんなところでも黒川先生は仕事されているのだと嬉しくなりました。
新館の杮落としの展示会は黒川紀章展でした。その中に大分のドームの美しい模型や写真や図面が飾られていました。クラサスドームは（国立よりも美しい）世界に誇れる本当に美しい競技場です。

黒川先生の作品は数知れず、名作が残されています。
特に遺作となってしまった新国立美術館は、私のお気に入りです。曲面体をガラスカーテンウォールで構成したホワイエの空間は、レストランやカフェ、ショップが美しい造形でつくられわくわくする楽しい空間です。そこに行くたびに、あの明るい黒川先生の笑顔を思い出します。

2007年に黒川先生は共生新党を立ち上げ、東京都知事選に立候補し見事に落選しました。その時、奥様である若尾文子さんと2人で乗っていた選挙カーも先生のデザインに依るものでした。（何でもデザインします）
先生が亡くなられた時、その建築家としての心境を一番理解していたのが、ライバルであり同志であった建築家 磯崎新氏でした。建築家 黒川紀章の描く次世代の都市としての東京を実現するのに都知事に立候補することは必然だった。黒川のアイデアは、誰かが将来引き継ぐだろうという追悼文を磯崎新氏は発表しました。

本日はここまでとします。

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幹事報告

１.　 おぎゃー献金運動の協賛に対して感謝状が届きました。

２．　ガバナー月信11月号を回覧していますのでご覧ください。
　　 クラブホームページからも閲覧できます。

委員会報告

・職場例会の報告
　　　職業奉仕委員会　佐野真紀子委員長

会員誕生日お祝い

髙橋潤一会員、久野和代会員に仲摩会長から誕生日記念品が贈呈され、ご本人からコメントをいただきました。

卓話

「To be a good giver」
　　　2024-25年度ロータリー青少年交換留学生
　　　 倉迫　諄さん

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